習慣と聴力低下の関係

習慣と聴力低下の関係

 

“多くの人々が「目と耳は大事にした方がよい」と感じていますが、実際、耳の健康を保つためには日常的に意識すべきことがあります。耳を大切にするために、何か意識していることはあるでしょうか?耳に悪影響があるとされる日常的な習慣には、以下の3つが挙げられます。

耳に悪い習慣①耳かき

耳の健康を保つために、耳かきは実は必要ありません。耳は自浄作用によって耳垢が排出される仕組みがあります。外耳道は薄い皮膚で覆われており、通常、耳垢は外耳道の手前部分にしかなく、日常の動作によって自然と外に押し出されます。しかし、耳かきを習慣化してしまうと、耳垢を奥に押し込んだり、外耳道の皮膚を傷つけたりするリスクがあります。特に、耳かきを過度に行うと外耳炎を引き起こす可能性があります。外耳炎は聴力低下や閉塞感を引き起こすことがあります。

耳の健康を保つためには、耳かきを行う必要はなく、耳の入り口を乾いた布でやさしく拭く程度で十分です。耳垢が気になる場合は、無理をせずに耳鼻科を受診して専門家に相談することが大切です。

耳に悪い習慣②鼻すすり

耳の不快な感覚を解消するために鼻すすりをする方は、耳管閉鎖不全などの問題がある可能性があります。

耳管は耳と鼻をつなぐ細い管で、通常は閉じた状態を保ちます。しかし、耳管閉鎖不全の場合、耳管が十分に閉じないため、耳の聞こえがこもったような感覚や耳鳴り、耳に水が入ったような感覚などの不快な症状が現れることがあります。このような症状を和らげようとして、無意識に鼻すすりをする習慣が生まれます。

しかし、最近の研究では、鼻すすりによって耳管を閉じる癖が真珠腫性中耳炎の原因になる可能性があることが明らかになっています。真珠腫性中耳炎は、耳の骨を破壊しながら進行する慢性中耳炎の一種で、膿の混じった耳だれや聴力低下、耳の痛みなどの症状が現れます。

したがって、鼻すすりによって症状が一時的に緩和される場合でも、根本的な病気の発症や悪化を引き起こす可能性があるため、鼻すすりの習慣がある方は、専門医に相談して適切な治療を受けることが重要です。

耳に悪い習慣③イヤホンの長時間・大音量使用

イヤホンの使用方法にも、注意が必要です。

世界保健機関(WHO)によると、携帯型音楽プレーヤーやスマートフォンなどの使用による音響性難聴のリスクが、世界中の若者たちに影響を及ぼしています。イヤホン難聴は、深刻な世界的な問題となっています。

イヤホンを使用して大音量で長時間音楽を聴くと、耳の中の「有毛細胞」が損傷を受けます。これらの有毛細胞は一度損傷を受けると再生されず、その結果、聴力が回復しなくなります。

WHOによれば、音量が85デシベル(dB)以上の音を聴く場合、その大きさと聴取時間に応じて聴力低下のリスクが増加します。安全な聴取時間を超えて大音量で音楽を聴くと、難聴の危険性が高まります。たとえば、80dBで週に40時間以上、98dBで週に75分以上音楽を聴くと、難聴のリスクがあるとされています。

iPhoneをお使いの方は、イヤホンの音量を確認するためにiPhoneの設定から「聴覚」を追加することができます。イヤホンを使用する際には、この機能を活用して適切な音量に調節することが重要です。

<音量の目安>

音量目安
100dB電車が通るときのガード下
90dB犬の鳴き声(正面5m)、騒々しい工場の中、カラオケ
80dB地下鉄の車内、電車の車内、ピアノ(正面1m)
出典:「生活騒音の現状と今後の課題」(環境省)

 

「骨伝導イヤホンなら難聴にならないかどうか」については、まだ結論が出ていない状況です。ですが、電車内などの騒音の中でも、通常のイヤホンよりも比較的聞き取りやすいので、音量を下げることにつながります。音量を上げすぎてしまう方は、骨伝導イヤホンを検討してもよいかもしれません。

まとめ

耳の健康を保つことは、重要ですね。日常生活で気をつけることが、将来の聴力低下を予防する助けになります。

聴力の低下は、回復が難しく、日常生活へ大きく影響するものです。耳の聞こえが悪化しないよう、日頃からちょっとした心がけを続けていきましょう。