ご存知ですか?オンライン化に潜む「イヤフォン難聴」の危険性と正しいイヤフォンの使い方ガイド

ご存知ですか?オンライン化に潜む「イヤフォン難聴」の危険性と正しいイヤフォンの使い方ガイド

「イヤフォン難聴」とは、文字通りイヤフォンの使用が原因で起こる聴力障害のことを指します。

イヤフォンやヘッドホンで大きな音を長時間聞いていると、

●音が聞き取りづらくなる
●耳鳴りがするようになる
●耳がふさがったように感じる

といった異変が生じることがあります。これが「イヤフォン難聴(あるいはヘッドフォン難聴)」と呼ばれる状態です。

 

「イヤフォンを大音量で長時間使用すると耳に悪い」という認識は、ある程度一般にも広まっています。実際に行われた2024年の調査では、57%の人が「イヤフォン難聴」という言葉を聞いたことがあると回答しています※。

 

この症状の本当に怖い点は、「一度損なわれた聴力は、完全には回復しにくい」という点です。「自分には関係ない」と思っているうちに、耳へのダメージが少しずつ蓄積され、気づいたときにはすでに難聴を発症していたというケースも珍しくありません。いったん聴力を失ってしまうと、回復は困難で、決定的な治療法もまだ確立されていません。では、音楽を楽しむことをやめるしかないのでしょうか? そんなことはありません。正しい使い方をすれば、イヤフォン難聴のリスクはしっかり防ぐことができます。

※クロスマーケティング「耳に関する調査」(2024年3月、全国20~79歳男女2,400名対象)

 

 

「イヤフォン難聴」は、「感音性難聴」と呼ばれるタイプの難聴のひとつです。
私たちの耳の中には「有毛細胞」と呼ばれる、音を感知して脳に伝える役割をもつ細胞があります。この有毛細胞は、耳の奥にある「蝸牛(かぎゅう)」という器官の中に整然と並んでいます。音が耳に入ると、この細胞がその刺激をキャッチし、脳へと信号を送ることで、私たちは「音が聞こえる」と認識できるのです。

しかし、長時間にわたって大きな音を聞き続けると、この有毛細胞がダメージを受けてしまいます。そして一度損傷を受けた有毛細胞は、残念ながら再生しません。
イヤフォンやヘッドフォンは鼓膜のすぐ近くで音を出すため、知らず知らずのうちに耳に強い刺激を与えてしまうことがあります。さらに、長時間の使用や音量調節への無自覚さが重なることで、有毛細胞を傷つけ、結果として難聴を引き起こす原因となるのです。

 
 

「イヤフォン難聴」の予防対策

■イヤフォンの正しい使い方について
「イヤフォン難聴」の存在を知っている人は多いですが、では実際に“正しく使う”とはどういうことでしょうか?
厚生労働省が推奨しているイヤフォンの正しい使用方法は以下の通りです:

● 音量はできるだけ低く設定する
● 長時間の使用を避けるため、音量と再生時間を意識的に管理する
● 少なくとも1時間ごとに10分ほど耳を休ませる

また、WHO(世界保健機関)では、イヤフォン使用時の安全な音量の目安として、大人は80dB以下、子どもは75dB以下、さらに週あたりの使用時間は最大40時間までとしています。
とはいえ、「●●dB」と言われても、どの程度の音の大きさなのか分かりにくいですよね。目安としては、「静かな場所で周囲の会話が聞き取れるくらいの音量」または「再生機器の最大音量の60%以下」が安全な範囲とされています。



■スマートフォンの音量制限機能の活用
通勤や通学時間に、スマートフォンの音楽等をストリーミングしてイヤフォンで楽しんでいる方も多いと思いますが、電車内はうるさいので、知らず知らずのうちに音量を上げていませんか?そんな方のために、スマホの音量を自動で安全範囲に保つ方法を紹介します。簡単な設定で難聴リスクを減らしましょう!

●iPhone(iOS)の場合、「音量制限」設定があります:
設定アプリ → サウンドと触覚 → ヘッドフォン安全性 → 音量を下げる
▶「85dB」を超えないように調整(WHO推奨の安全基準)
▶イヤフォン使用時の週間音量レポートも確認可能(ヘルスケアアプリ内)
詳細はAppleサポートページへ

●Androidスマートフォンの場合、「メディア音量制限」が使用できます:
設定 → サウンドとバイブレーション → 音量 → メディア音量制限をON
▶「85dB」を超えないように調整(WHO推奨の安全基準)

※Andriodスマートフォンの場合、機種によって設定場所が異なることがあります(例:Samsungは「サウンドアシスタント」、Xperiaは「オーディオ設定」など)具体的にはメーカーにご確認ください。

■音量制限以外の対策

ノイズキャンセリング機能を活用しよう

周囲の騒がしい音をカットするノイズキャンセリング機能を使えば、音量を抑えてもクリアに音を聞くことができます。特に電車内やカフェなどの騒音が多い場所では非常に効果的で、耳への負担を軽減できます。
※ただし、外の音が聞こえにくくなるため、歩行中や自転車利用時には使わないよう注意が必要です。交通事故のリスクがあります。


耳に優しいイヤフォンを選ぼう

遮音性の高いイヤフォンを選ぶと、周囲の騒音が耳に入りにくくなるため、無理に音量を上げる必要がなくなります。結果として耳への負担が少なくなり、聴力を守ることにつながります。


「耳を休める日」をつくろう

意識的に「音を聞かない日」を設けてみましょう。例えば通勤時や就寝前に音楽を控え、耳栓を使って静かな時間を過ごすのもおすすめです。自然音や無音の環境で耳をリセットする時間をもつことは、聴力回復に役立ちます。


定期的に聴力をチェック

【セルフチェック】
インターネット上の簡易聴力チェックツールを使って、数か月に一度、自分の聴こえの状態を確認しましょう。

【専門的な検査】
年に一度は耳鼻咽喉科での精密な聴力検査を受けることをおすすめします。会社の健康診断なども上手に活用しましょう。症状がなくても、早期の異常発見が重要です。


違和感を感じたら、すぐに使用をやめる

大きな音を聞いた後に、耳鳴りがしたり、耳が詰まったような感覚、聞こえにくさを感じたりした場合は、すぐにイヤフォンの使用をやめて耳を休ませましょう。2〜3日安静にしても改善しないときは、早めに医療機関を受診してください。その際は、どのくらいの時間・音量でイヤフォンを使っていたかを医師に伝えると、診断の助けになります。


安全に、楽しく使いましょう

リモートワークや動画視聴が日常化する中、イヤフォンやヘッドフォンを使う機会はますます増えています。便利でおしゃれなアイテムだからこそ、耳の健康にも配慮しながら、上手に付き合っていきましょう。

オンラインの聞こえチェック